元イメクラ嬢まりあ☆風俗店経営日記

　それは、お店を去って行き、他店で働いている嬢からでした。

　彼女からの電話は私にとって、驚きでした。

　なぜなら、彼女は半ば私達を裏切る形での退店だったからです。

　彼女は、とても素直な女の子でした。人としては、お世辞にもしっかりした子とはいえませんが、怒られた事に反省し、泣きながら謝れるとても素直な子でした。ただ、表現がとても下手で嫌われてしまう事もある子でした。そして、１番の悪い処は、自分にとても甘く、苦しい時に踏ん張れない子でした。

　でも、私は、その子が可愛かった。１つ１つ子供の様に成長していく姿は、とても可愛く、そして、応援してあげたい気持ちにさせられた。

　しかし、彼女は私との何度もかわした約束を破った。約束といっても単純な事だ。

　人を想い、感謝の気持ちを忘れず、奢り高ぶらない素直な気持ちでいる事。

　自分の目標を見失わない事。

　彼女は、分かっているのに、その気持ちを失った。

　私の応援してあげたい気持ちも同時に失ったのだ。

　そして、彼女は、従業員をも裏切りでていった。

　

　その彼女からの電話だった。

　彼女は謝りたいとの事だった。

　私は、不謹慎にも嬉しく思った。しかし、彼女の思いは、それではなかった。

　また、お店に戻りたいとの事だ。

　在籍するお店がとんでもない処だったらしい。しかし、彼女がそう思うのも無理はない。うちは、特別なのだ。私達のお店は、人と人との関係をとても大事にしている。

　頑張ってくれる嬢には、従業員をはじめ、皆でバックアップして行こう！

　かといって、落ちこぼれてしまう嬢を見捨てたりはしない。頑張れるチャンスを与え、そこで頑張れた時には、私達も彼女の為に頑張る！ただ、それにも限度があり、頑張っている人を傷つけたり、頑張る気持ちを失えば、彼女達は、自然と去って行く。

　話を戻すが、彼女の言い分は、今更戻りたいっていうのは・・・

　的な事だった。

　私は、その言葉に誠意は感じられなかった。

　今のお店を辞めて、もう１度チャンスをくれ！といのならば、話は変わってくる。痛い思い、苦しい思いをして、少しでもやる気と覚悟を決めてくれたのならば、私は皆に頭をさげ、１度のチャンスを与えただろう。

　しかし、私は皆の母でなければならない。そして、私の力になってくれた人達の母でありたい。今の感情１つで彼女を受け入れられなかった。

　それは、今まで苦しい思いをした彼女の為にすらならない。今、私が彼女をすんなりと受け入れる事は、彼女の踏ん張る気持ち、頑張ろうとする気持ちをまた０へ戻してしまう事になる。

　そして、苦しい思いをし、踏ん張って、頑張ってくれた従業員へ申し訳ない。

　私は曲がった事は大嫌いだ。

　しかし、私がここで、首を立てに振らない事。それは、とてもつらい事だった。

　私は、彼女につけたした。来るなら覚悟を決めて来い。と。

　その覚悟を決めた姿を目にした時、従業員の心も和らぎ、彼女の心も成長してくれるだろうと私は思っているからだ。

　人というのは、差さえあって生きている。そして、誰にでも心がある。

　想いというのは、募るほどに表現されるものだ。

　それをなくして、人との関係はうまくいくものではない。計算されたものでは、人の心を掴む事はできないのだ。

　今、彼女にとっての自分を変えられるターニングポイントなのかもしれない。